地域の達人

秋田県大館市曲げわっぱ

天然の秋田杉で作られた大館の曲げわっぱは、世代を問わず人気があり、国の伝統的工芸品にも指定されています。
大館市の曲げわっぱの達人・佐々木悌治(ささき ていじ)さんをご紹介します。

達人の道

佐々木さんは元々、家具や建具を作る職人であった。 昭和36年、当時勤めていた会社で“曲げわっぱ”の制作が命じられた。おおよその工程はわかっていたものの、実際に作るのは初めてである。他社で見たものを思い出し、試行錯誤を重ねて、制作を繰り返す事で、技術を磨いていった。その結果、伝統工芸士の資格を取得するまでに至った。
定年後、これまでの経験を買われ、職業訓練センターで曲げわっぱの講座を任された。その講座で縁があり、その後も少年自然の家や大館市内の小学校で曲げわっぱづくりを教えることとなった。
2009年、「大館曲げわっぱ体験工房」を開設。工芸品を展示し、曲げわっぱづくりの体験教室を行なっている。

達人の技

曲げわっぱは、1枚の秋田杉の板から作られる。制作物に合わせて作った板を煮沸し、軟らかくなった板を曲げて形を作っていく。接合部は桜の皮で縫って綴じる。こうしてできた部品を組み立てて磨いていく。
制作には経験が必要だ。刃物の使い方、接合部の穴の開け方、そして材質を見極める目。失敗を繰り返しながら養われていくものだという。
達人は、板の硬さや厚さなど、素材の個性を考えながら、きれいな輪を作っていく。一番目立つところに綺麗な木目をもっていく。美しく繊細な年輪と、滑らかな肌触り。気品のある作品に達人の技が光っている。

達人との交流

曲げわっぱづくり体験は、天然の秋田杉の香り、美しさ、肌触りを感じながら進められていく。佐々木さんの笑顔と、秋田弁が織りなす「オッケーです」の一言をもらいたくて、つい制作にも熱が入る。
体験は、曲げわっぱを組み立てるための接着剤をつけるところから始まる。へらを使い、接着剤を曲げわっぱに点付けしてから薄く伸ばす。薄く均一な量を付けるのが中々難しい。そんな仕草を見て、佐々木さんから優しいアドバイスが入る。
次に満遍なくハンマーで叩き、底板を枠にはめ込んでいく。しっかりとはめたつもりが、達人はわずかな隙間も見逃さない。
最後に磨き上げである。やすりで角を落として曲げわっぱに丸みを出していく。この丸みについては個人の好みで良いそうだが、一向に表面の凸凹が滑らかにならない。「杉は夏に成長した部分はやわらかく、冬に成長した部分は硬いので、木目に合わせて磨き方を変えるといいですよ」と達人のアドバイス。だんだん磨いていくうちに、自分好みの曲げわっぱに仕上がっていき、愛着が湧いてくる。そして完成。
曲げわっぱの伝統を受け継ぐ達人から、曲げわっぱの歴史を聞きながら、体験を通じてアドバイスを受け、その伝統の一端に触れる。曲げわっぱづくり体験ではそんな贅沢な時間を過ごすことができる。

  • 店内写真
    「大館曲げわっぱ体験工房」

    〒017-0841

    秋田県大館市大町70

    TEL 0186-42-7502

    定休日 毎週火曜日・水曜日・祝日

    http://odate-magewappa.com/workshop.html

  • 佐々木さん
    佐々木 悌治(ささき ていじ)

    大館曲げわっぱ協同組合理事長。「お客さんが“ありがとう”と御礼を言って笑顔で帰ってくれる。こんな仕事はそうそうない!」と朗らかな優しい笑顔で話してくれた。時間ができたら新商品も考えたい、と多忙ながら今後の目標を教えてくれた。

制作/ グラフィックデザイナー 三浦 梨恵子(大館市在住)